#1 エピローグの始まり

「ループでやさぐれたマインちゃん」シリーズのアイキャッチ

ロゼマがやさぐれてます。
原作と齟齬があるのは許せん! 前向きなロゼマ、パワフルなロゼマしか認めん!
そういう方はそっ閉じで。

あれ、ここ、どこ……?
わたし、死んだはず……
生きてる? なんで? みんなが若い? 魔力の流れがおかしい?
ぐるぐるととりとめもなく思考が空転する。

ここはどこ?
……神官長室。

周りにいる人達は誰?
……家族、フェルディナンド、ジルヴェスター、カルステッド。

今は……いつ?

「マイン、契約書にサインしなさい」

バッと手に持っている物に視線を落とす。
――あの契約書だ。わたし達を引き裂き、わたしを貴族社会に引きずり込み、その上でジルヴェスターが家族を処分したがっていた、あの契約。
そうして貴族にさせられたわたしはどうなった?
毒で二年も治療して。それでも治りきらなくて。そのユレーヴェだって領地とジルヴェスターの為になかなか作らせてくれなくて。
起きたと思ったら浦島太郎で、何の準備もされてないのに貴族院に放り込まれて。
ルッツとの契約だって解除させられて。
何をやっても怒られて怒鳴られて。仕事ばっかりしてたのに「のんびり」だの「遊んでた」だの。
領主主導の領地の事業をほとんど一人でやらされて、売上は全部領地に取られて、なのに経費はわたし持ちだったね。
領主候補生の予算とやらも貰ってなかったし。予算がつかないなら、給料くらい払わなきゃダメじゃない? ジルヴェスターとフロレンツィアより働いてたはずだけど?
何で、わたし、過去にいるの?
あれが繰り返されるの?
イヤだよ。もうヤダ。せめてちょっとは本を読めると思ったのに、そんなこともなかったし。
家族を家族と呼べなくなる契約。わたし達への温情だって言ってたけど、絶対違うよね。いつ殺してもいいから、人質にしたんだよ。わたしを好きに扱うために。
魔力を献上して流行を献上して事業を献上して、ヴィルフリートをアウブにするために婚約させられて。挙げ句、八つ当たり用サンドバッグだった。
婚約者への態度ってあれでいいの?
目立たないようにしようとしても流行発信しろとか良い成績を取れとか命令されて、ヴィルフリートやシャルロッテ、学生達が流行や事業をわたしの物だと喧伝してまわるから中央や上位領地に目をつけられて。
そうやって貪られて、魔術具以下の扱いじゃないか。従属契約と何が違うのか。フリーダの愛妾契約の方が、よっぽどマシだった。

「マイン、早くサインしなさい」

フェルディナンドの苛ついた声。
……わたしのディーノじゃない。サインして、家族の顔を見つめる。泣き濡れた顔。

「父さん、母さん、トゥーリ、カミル」
「マイン!?」

焦る貴族達の声。金色の冷たい炎に体が包まれていく。

「ごめんね。わたし、貴族なんかになったら頑張れないよ」
「マイン! お前はずっと、いままでもこれからも、いつまでも俺達の娘だ!」
「わたしのマイン。今まで頑張ったんだもの。もういいのよ」
「マイン! マイン! 燃えてる! 燃えてるよ!! ヤダ! 助けて! 妹なの!!」

炎に包まれるわたしを抱きしめてくれる家族。一緒に燃えて、消えていく。
これでいいのかもしれない。わたしが死んだあと、きっと処分されるから。

わたしはまた、死んだ。

『……ン。……イン。マイン。起きなさい』

うるさい。死んだんだから、ゆっくり寝かせてよ。いい加減、休みたいんだけど?

『何故勝手な事をしたのです。せっかく記憶を持たせてあげたのに』

また女神?

『あなたが死んでしまったせいでエアヴェルミーン様が……』

あぁ、メスティオノーラか。そんなの、自分で助けなよ。
あんな最低の時に説明もなく放り込んで、思い通りに動かせるとでも? せめて報酬とご褒美を用意すべきじゃない? わたしは奴隷じゃない。

『記憶を持たせてあげたでしょう。ツェント候補なのだから、エアヴェルミーン様を助けるのは当然です。ドレッファングーア、ヴェントゥヒーテ、もう一度お願いします』

『糸が弱ってきてるのよ。クインタも使った方がいいんじゃないかしら』
『そうね。二人揃ってる方が模様が美しいわ』
『駄目です! あれはエアヴェルミーン様に攻撃したのですよ!? エアヴェルミーン様だってマインの方が良いと仰るのですから』
『もう、本当にこの子は……仕方がないわね。行ってらっしゃい、マイン』

勝手な事ばかり言う女神達を無視していたら、意識が闇に呑まれた。

「げほっ、ごほっ、うぇほっ……」

バシンと背中を強く叩かれて、喉に詰まっていたユレーヴェを吐き出す。

「寝過ぎだ、馬鹿者」

またわたしのディーノじゃないや。ユレーヴェで二年寝たあとみたい。
この先の事を考えるとうんざりする。
とりあえず貴族院入学は徹底的抗戦しよう。嫌々でも渋々でも行くことに同意したら、行くと決めたのはわたしって事になってしまう。
そして全ての責任を被せられるのだ。

「体は動かせるか?」
「……全く動きません」
「少し待っていなさい」

魔術具を腕に嵌められる。動けるようにはなるけど、無理矢理通わされるのはどうしてなんだろう。
わたしの瑕疵になると言ってるのは、多分、フェルディナンドだけだ。神殿育ちの上級貴族、洗礼式を失敗した娘だ。入学が一年や二年遅れたって今更だと思うんだけどな。

洗礼式を潰した事について、ジルヴェスター夫妻からもヴィルフリートからも謝罪はないままだった。何度繰り返しても、謝罪はない。
わたしなんてどう扱ってもいい、貧民の身食いだって事なんだろう。だったら貴族にせず、従属契約にすれば良かったんだよ。そうすればお望み通り、壊れるまで使い潰して捨てられたのに。

「三日後に回復を祝う晩餐会、その後は貴族院の予習を中心として体調を整え、側近候補との顔合わせに子供部屋だ」
「わたくし、予習よりも先にしなければならない事があると思うのですが」

このフェルディナンドは、わたしが日本で上級貴族だったと思い込んでいる。
貴族らしさの欠片もないわたしを見ていて、何でそんな思い込みを持ち続けられるんだろう。
ベンノさんが世間知らずの若造だったなって笑ってたけど、本当にそうだったってディーノが落ち込んでたなぁ。今となっては懐かしい。

「何だ? 君に足りていないのは予習だけだろう?」
「お茶会での振る舞いが分かりません」
「分からぬはずがないだろう。貴族は多かれ少なかれ社交をするものだ。成人していた君なら問題なかろう」
「わたくし、貴族にさせられてから一年ほどしか経っていません。神官長から見て、領主候補生として全く問題の無い振る舞いが出来ているということですか?」

渋面になるフェルディナンド。問題だらけの言動を目の当たりにしていながら問題ないはずとはこれいかに、だよ。

「それに、ヴィルフリート様とシャルロッテ様の教育はどうなっていますか? アウブの実子より良い成績を取る訳にはまいりませんでしょう?」
「何を言っている? 優秀である事は君の価値となり身を守る盾となるし、領主候補生である以上は優秀でなければならぬ」
「それはアウブの指示ですか?」
「……」

よし、黙った。ジルヴェスター至上主義がこの次期のフェルディナンドだ。
廃嫡が妥当なヴィルフリートを次期領主にしたがっているジルヴェスター、その望みを最優先にしているフェルディナンド。領地経営など何も考えてない上層部。
これで引いてくれればいいんだけど。

「……今日は湯浴みをして休みなさい。フランに指示は出してある」

往生際が悪いなぁ。優秀さを見せつけるとエーレンフェストにはもったいないって王族や上位領地が出張ってくるんだよ。
フェルディナンドだってそうだったじゃないか。
最優秀を取れ、流行を発信しろ、寮内をまとめろ、ライゼガング系の支持を取り付けろ、そして成果は実子に献上しろってめちゃくちゃだ。
わたしがやったことだって皆知ってるのに、献上しろだの譲れだのどうやって?
それで元々無いも同然だったライゼガング系や中立派の支持を更に失ったのに、全部わたしのせいにされるなんてまっぴらだ。御免被るよ。

完全介護状態で湯浴みをさせてもらい、軽く食べて早々に寝た。

あっという間に晩餐会の日になった。
フェルディナンドはじっと何やら考え込んでいる様子だったけど、ジルヴェスターのためにわたしをどう使うのか最善か、そんなところだろう。そんなことはジルヴェスター本人に考えさせればいいのに、ご苦労なことだ。
前は慌ててベンノさんたちを呼んで十歳からのスカート丈に直してもらったけど、今回は呼んでない。貴族教育をほとんど受けてない子供が自腹でやることじゃないし。
親が用意するのが当たり前なのだ。親が素知らぬ顔をするなら、成人側仕えが進言しないとね。リヒャルダもオティーリエもするわけないけど。

「姫様、ご無事のお目覚め、お慶び申し上げます」
「ローゼマイン様、お目覚めをお待ちしておりました」

城の入口でノルベルト達側仕えとダームエル、アンゲリカに迎えられる。
全然全く無事じゃないんだけど、エーレンフェスト上層部の連絡網はどうなってるんだろう。
レッサーくんでとことこと北の離れの自室に入る。リヒャルダとオティーリエが張り切って着替えさせようとして、一気に青ざめた。

「姫様、十歳のお衣装は……」
「衣装がどうかしましたか?」

前の記憶があるから知ってるけどさ。
今のわたしは貴族教育もあやふやで、淑女教育に至っては一切されていない無知な子供。ユレーヴェに浸かって成長していない八歳だ。
つまりわたしは衣装持ち。しかも最新流行ばかり。何が問題なの、と全力でそらっとぼける。

「いえ、十歳におなりですので、お衣装がございません。ご用意なさらなかったのですか?」

リヒャルダは馬鹿ではなかろうか。三日前に起きたばかりの子供に何を言ってるんだろう。
領主候補生の予算とやらで毎年流行の衣装を仕立てればいいではないか。サイズも変わらないんだし。
予算なんかついてないのは知ってるけど、それを放置する筆頭側仕えってどうなんだろう。

「衣装が無い? たくさん仕立てているでしょう?」

必殺のアンゲリカポーズ。ワタクシ、ナニモ、シラナイノデス。

「姫様は十歳におなりです。お年に見合った、相応しいお衣装を纏わねばなりません。ましてや今日の晩餐会は姫様の回復を祝うもの。お衣装のご用意は必須でございますよ」

腰に手を当ててお説教してくるリヒャルダ。
だから三日で新しい衣装をどうやって用意するのさ。筆頭側仕えなんだから、ジルヴェスターかフェルディナンドに許可を貰えば衣装くらい用意できたでしょう? 何でわたしが自分で用意する前提なのかな? 仕事しないリヒャルダ、さすがジルヴェスターの教育係だ。

「わたくし、いつの間に十歳になったの?」

ユレーヴェで眠っていたわたしにとって、襲撃された夜から一週間も経っていない。仮死状態で二年を過ごし、目覚めてからも事業関係以外はろくに説明されていない。
全く成長もしてないし、わたしは八歳なのだと全力でアピールする。
いきなり大慌てになるリヒャルダとオティーリエ。せいぜい頑張るといい。わたしに落ち度はない。あるのはシャルロッテを救って代わりに毒を受けたという英雄的行為、功績だ。
ジルヴェスター一家のみを領主一族と仰いでいるリヒャルダ、フロレンツィアの間諜であるオティーリエは功績だなんて思っていないだろうけど。
シャルロッテが無事で良かった、それだけのはずだ。
そんな二人をどうやって解任するか辞任させるか、バタバタと衣装を広げるのを眺めながら考える。わたしに仕える気がないのなら、初めから側仕えにならなければよかったのだ。仕える身分でありながら自分達の不備を主の責任だと責めるような側仕え、いらない。
無駄にたむろってた城限定側仕えがいなくなってるのはすっきりするけど、その説明がないのもどういうことなんだろう。貴女達にとっては納得済みの過去の事なんだろうけど、わたしからすれば、たった数日でいきなりガランとした自室はどうしたことかとなるんだけどね。
流行が古い、スカート丈が短い、何故用意しなかったと責任を擦り付け合う二人をぼんやりと眺める。
あ、あれ、すぐにお直し出来るやつ。作った時に教えたんだけど、すっかり忘れてるみたいだ。覚えてても二年前の衣装だからって候補から外してるのかな。いくら広げて探しても二年前の衣装しか無いのに、無駄なことを頑張るね。

「やはりお衣装がございません。どうなさいますか、姫様」

それをどうにかしてなんとかするのが筆頭側仕えの仕事じゃないのかな、リヒャルダ。

「どうしたらいいのかしら? わたくし目覚めたばかりで何も分からないの」
「アウブ夫妻もお子様方も、晩餐会を楽しみにしておいでです」
「そう」
「正餐ですから、正装していただかなくてはなりません」
「そう」
「姫様! どうなさるのかとお聞きしているのです!」
「衣装はたくさんあるでしょう? それでは駄目なの? 仕立てたばかりの正装もあるのに」
「お年に相応しいお衣装がございませんと申し上げたでしょう。何故用意なさらなかったのですか」

うおぅ。責任転嫁をまた始めやがりましたよ、ベテラン側仕えが。
アンゲリカポーズ再びで迎え撃つしかないね。

「リヒャルダの正装は三日で仕立てられるの?」

よっし。黙ったよ。
上級貴族の正装でも無理なのに、領主候補生が用意できるわけないでしょう。ついでに仮死状態でどうやって専属と打ち合わせするのか教えて欲しいなぁ。
ここまで言うんだから、リヒャルダなら出来るんだよね? 突っ込んでみよう。

「わたくし、ずっと仮死状態だったそうなの。その状態でどうやって衣装を用意するのかしら? リヒャルダなら出来るのね? どうすれば良かったのか教えて下さる?」

もちろん誰であってもどうにもならないんだけど、仮死状態で指示を出すミラクルな方法があったとしても今更どうにもなりません。
ユレーヴェで治療中は仮死状態、これ、貴族の常識。わたしを一体なんだと思っているのか。

「姫様が欠席なさるわけにはまいりません」
「そう」
「本当にお衣装の用意をなさっていないのですね?」
「わたくしはまだ八歳だし、仕立てたばかりの衣装があるのだから問題ないでしょう?」
「いいえ、姫様は夏に十歳におなりです。流行遅れの、お年に見合わない衣装を纏うことはなりません」
「そうなの?」
「さようでございます。ですから、どうなさいますか」
「わたくしには分からないわ。どうすれば良いのか教えて頂戴、リヒャルダ。貴女はわたくしの教育係でしょう?」

リヒャルダとオティーリエがどうにも出来ない問題を八歳児に丸投げするとは何事か。いい加減にして欲しい。
しばらくオティーリエと話し合っていたリヒャルダがようやく諦めたらしく、ジルヴェスターに古い衣装で正餐に参加する無礼をお許し下さいとかいう内容のオルドナンツを送った。
保護者と側仕えが何もしなかったのが原因なのに、わたしの責任で無礼であるらしい。本当にいい加減にして欲しい。
二人共解任しよう。絶対しよう。それも早急にだ。理由ならいくらでもある。ディーノに鍛えられた口先マジックを披露してやろう。
ぶつぶつと不満を言い立てるリヒャルダとオティーリエに着替えさせられて、晩餐会に向かった。

やっぱりジルヴェスター夫妻に自分達の子供じゃない宣言をされたので、適当に聞き流した。
そうですね。子供じゃないから衣装のことなんかどうでもいいんですね。貴方達の責任じゃないんですね。
この頃のわたしに対する責任の所在、本当に謎だ。
リンクベルク家は養子に出したからと護衛騎士を出す以上のことはせず、養子縁組して養父ちちになったはずのジルヴェスターは自分の子供だと認めず、養母ははと呼べと言うフロレンツィアとは養子縁組の契約をしていない。
ボニファティウスは待望の孫娘だと騒ぐだけで何もせず、後見人の指名を受けたフェルディナンドは青色神官。
ライゼガング系は一の姫だ希望の星だと持ち上げて傀儡アウブにしようと画策し、身内だから優遇しろ利を寄越せと集るだけで何をしてくれるわけでもない。
ユレーヴェ古漬け中にヴィルフリートとシャルロッテの側近に打診されてほいほい受けるから、まともな上級貴族の側近候補が全滅だし。

わたしの〜保護者は〜どこですか〜♪

今更なことを考えながら、顔に笑顔を貼り付けて会話をする。もぐもぐ。料理はそれなりに美味しいね。
食事が終わってお茶とデザートになり、ジルヴェスターが口火を切る。

「今年の流行発信のことだが、ローゼマイン、どうするつもりか聞きたい」
「流行発信ですか? 今まで通り、フロレンツィア派のお茶会でするのではないのですか?」

そらっとぼけると、一同が愕然としている。貴族院でって言いたいんだよね。知ってるけど、何も聞かされてませんから。
領地順位を上げるために流行発信したいんでしょ? アウブが責任を持って決定して指示すればいいのではないかな?
二年もあったのに何も考えてないのは相変わらずですね。八歳児に丸投げしないで下さい。

「其方も無事に目覚め、貴族院へ行くのだ。領主候補生が在籍するこれから暫く、影響力を高める絶好の機会なのは其方なら分かるだろう。ヴィルフリートの為にも流行発信は必須だ」
「わたくしまだ八歳なのに、貴族院へ行くのですか? 入学は十歳ですよね? フェルディナンド様も行けと仰ってましたが、貴族院へ通うのは早すぎるのではありませんか?」

再び愕然とする一同。
冬入学は全力で抵抗しますよ。せめてアナスタージウスとエグランティーヌが卒業するまでは行きたくないのです。その後のヒルデブラント、どうするかなぁ。
ジギスヴァルトとレスティラウトも全力回避したいし、どうしても行かなきゃいけないっていうんなら、せめて季節外にしたいんだけどな。
あ、コルネリウスもなんとかしなきゃ。アレキサンドリアでも最後まで立場を弁えないままで、最終的にはレオノーレと二人の子供達まで一緒に排除されちゃったもんね。レティーツィアを含めたわたしとディーノの子供達にも上から物申し続けるもんだからさ。
それにしてもわたしの流行をどう発信するかわたしが決めて、更にわたしが中心になって進めて、それがどうしてヴィルフリートの為になるんだろうね。
譲ればいいだろうとかそれが当たり前だとか思ってるんだろうけど、貴族院で子供達はちゃんと見てますよ?
前は何も分からなくて下町の皆を守りたくて、ただただ言われるままに必死だったけど、大領地アレキサンドリアのアウブだったわたしは簡単に言いなりにならないよ?
確認したらシュタープもメスティオノーラの書もあったし、いつでも皆を連れて逃げられるもんねーだ。
立ち直った皆さんがヒソヒソやってますが、何かおかしなことでもありましたか? 現状、ヴィルフリートよりも教育されてない幼児ですが?

「あー、フェルディナンド? どういうことだ?」
「貴族院へ行くよう言い聞かせたのだが、どうしても頷かぬ。体が動かないことと教育不足が不安であるらしい」
「普通に動いているではないか。教育とて今からでも間に合うだろう?」

もそもそと左腕の魔術具をはずす。
何をしてるんだ? という顔で眺めてる皆さん、ショーの始まりですよー。
腕輪をはずした途端、上半身のバランスが崩れて椅子から転げ落ちる。このまま頭をぶつけて再療養にならないかなぁと思ってたら、アンゲリカがナイスキャッチ。
痛くないのは有り難いけど、ちょっと残念だ。なんとか貴族院の特別措置をもぎ取りたいんだけど。

「……自力で動けぬらしいというのは分かったが、その、だな。魔術具があれば問題なく動けるのだろう? 其方には貴族院へ行ってもらわねば困るのだ」
「ジルヴェスター!」
「仕方がないではないか! 特別措置の申請を取り下げたのだ! 再申請など出来ぬ!!」

怒鳴るボニファティウス、ぶっちゃけるジルヴェスター。こめかみを高速トントンするフェルディナンド。フロレンツィアだけが満足そうだ。
さて、教育不足っぷりを披露しなくては。

「えっと……? つまり、何も確認せずに早合点したアウブの尻拭いを、わたくしがしなくてはならないということですか?」
「……ッ」
「ヴィルフリート様の為に流行発信せよとのことですが、わたくしの流行をわたくしが発信して、それがヴィルフリート様の功績になるのですか?」

うろうろと視線を彷徨わせるジルヴェスター、微妙に目を伏せるフロレンツィア。ボニファティウスの前で全ての功績をヴィルフリートに譲れとは言えまい。

「あと、フェルディナンド様に領主候補生である以上は優秀でなければならない、だから貴族院の予習を中心にすると言われたのですが、ヴィルフリート様とシャルロッテ様にはフェルディナンド様より優秀で厳しい先生が付いているのですよね? そうでなければお二人がわたくしより良い成績を修めるのは難しいと思います」

ぐっと言葉に詰まって忙しなく視線をうろつかせるジルヴェスター。
ヴィルフリートは当然だと胸を張っているが、エーレンフェストはもちろん、ユルゲンシュミットにフェルディナンドより優秀で厳しい教師は存在しない。むしろフェルディナンドは教師失格だ。厳しすぎて生徒がついていけない。
大体、毎日自由時間があって旧ヴェローニカ派の側近に甘やかされているヴィルフリートだ。優秀者を取り続けて立派だと言われていたが、優秀者とは言え下の方だった。
学年ではドレヴァンヒェルあたりの上級貴族に負けていたから、領主候補生として特に優秀というわけではないだろう。優秀者なら中級貴族でも取れるんだし。
ゲルラッハ周辺のギーベに就ける時、ジルヴェスターとフロレンツィアは優秀者になっていたんだから大丈夫と自信満々に送り出していたが、結局統治に失敗してアレキサンドリアは大迷惑を被った。
魔獣が流れ込んでくるわ、最優先で交易しろ特別扱いで安くしろと上から物申してくるわ、挙句の果てには難民が押し寄せてくるわで散々だった。
フロレンツィアは余裕ありげに微笑んでるけど、わたしが最優秀をとってもヴィルフリートに献上なんか出来ませんよ? 個人の成績ですからね?
何もせず何も言わず、ただ微笑んでいれば全てお膳立てしてもらえると思ってるのは知ってますけどね?
あー。働かざる者食うべからずを叩き込んでやりたい。

「それから、リヒャルダに衣装がないと随分怒られたのですが、皆様、貴族院入学前から全てご自分で用意されていたのですか? わたくし、たった三日でどうやって正装を仕立てるのか、どうしても分からないのです。リヒャルダが何度もどうして用意しなかったのかと怒っていたので、何か方法があるのですよね? ユレーヴェでの治療中に指示を出す方法もあるのですよね? 教えて欲しいとお願いしたのですけど、教えてくれないのです」
「……リヒャルダから連絡があったが、フロレンツィア、用意していなかったのか?」
「何故わたくしが? エルヴィーラが用意するものでしょう?」
「ジルヴェスター! 養子縁組して親となったのは其方だ! 其方が用意せずに誰がするのだ!! フロレンツィア、其方もだ! 養母ははと呼ばせている以上は其方にも責任があろうが!!」

ボニファティウス、いきなりヒートアップしてしておりますー。血管切れない程度にしてくださいませー。切れたら癒やすけど。

「リヒャルダ! 其方は誰に指示を仰いだのだ!」
「どなたからも指示は頂いておりません」
「指示がなければ確認せよ! それが筆頭側仕えの勤めであろうが!! フェルディナンド! 其方も後見人でありながら何をしていたのだ!」

被弾者がどんどん増えて行くねー。ガンバレおじい様ー。
青色神官が領主候補生の後見人ってありえないと思うんだけど、エーレンフェストは身分が仕事してないからしょうがないんでしょうねー。
ボニファティウスが冷静さを失ってる間にちゃちゃっと仕事しない側仕えを解任しようっと。

「おじい様、北の離れにたくさんいた側仕えがいなくなっていたのです。お城の側仕えは必要ないということですよね? だったらリヒャルダとオティーリエも解任します。ほとんど神殿で過ごしていますし、教育係と言いながら何も教えてくれないんですもの」
「ローゼマイン、それでは君の側仕えがいなくなる。それにジルヴェスターの判断で付けられたのだ。君が勝手に解任することはならぬ」
「側仕えなら神殿にいるではないですか。フラン達がいなくなると困りますけど、わたくし、リヒャルダとオティーリエがいなくなっても困りません」

三度、愕然とする皆さん。
ほんっとうに困らないんだよね。リヒャルダとオティーリエってわたしが神殿にいる間、何してるんだろう。確認したことないけど、真剣に謎だ。
貴族院に連れて行くのはリンクベルク家から借りてもいいけど、どうしようかな。ライゼガング系は嫌なんだよね。上から物申す連中ばっかりだし。
ギーベ・キルンベルガにパートタイマーで出してもらえないか聞いてみようかな。あのギーベ領は比較的まともな人が多かったし。
のんびり考えている間もボニファティウス砲が無差別に着弾していく。現時点の保護者とか後見人とか、ボニファティウスが一番マシかもしれないなぁ。
よし、燃料投下っと。

「おじい様、おじい様。今、あれって不思議に思ったのですけど」
「む? 何だ? おじい様に何でも言いなさい」
「フェルディナンド様は青色神官で神官長です。わたくしは領主候補生で神殿長ですが、フェルディナンド様って正式な後見人なんですか?」

愕然とする一同、四回目。
ここまで身分が仕事してないエーレンフェストって凄いね。
ボニファティウス、比喩じゃなくぐるぐる唸りだしちゃった。

「ジルヴェスター、フロレンツィア。どうやらしっかり話し合わねばならんようだ。フェルディナンド、カルステッド、エルヴィーラ。其方等もだ」
「あ、ああ。そ、そうだな」

ボニファティウス覚醒ですね。さすがのフロレンツィアもちょっと青褪めてます。まとめて怒られればいいんだよ。
おじい様、やれば出来るんだから最初から覚醒していて下さい。

「おじい様、わたくしは神殿に帰っていいですか?」
「其方はしばらく、儂の屋敷で過ごしなさい。今までのような不自由はさせぬから安心せよ」
「はぁい。かしこまりました」

ぐだぐだになって、晩餐会は終わった。

ボニファティウスの屋敷で側仕え達に世話をされ、全く動かない体に驚かれた。
病み上がりでこんな状態の子供に無理をさせるとは何事かと怒って、ちゃんと休養すべきだと進言してくれた。
そしてのんびりと寝台で本を読む毎日だ。兵法書がほとんどだけど、満足である。
食後は腹ごなしも兼ねて軽い散歩で体力作りだけど、絶対に無理はするなと心配して気遣ってくれる。ワタクシ、お姫様らしいお姫様の扱いを受けております。

鬼の取り調べ官と化したボニファティウスにより、貴族教育そっちのけ、淑女教育皆無、仕事漬けだった生活が詳らかにされ、ついでに領主候補生の予算が支給されていないことが発覚。
ジルヴェスターがちゃんと支給していると言い張ったらしいが、ボニファティウスの指揮で調査した結果、旧ヴェローニカ派の文官が着服していたと判明。
怒り狂ったボニファティウスにより更に調査がなされ、ヴェローニカ健在時と変わらぬ着服や横領をしていた文官だけでなく、おこぼれに預かっていた側仕えや騎士も大量に処分を受けた。ジルヴェスター一家の側近がごっそり減ったそうだが、自業自得だから苦労すればいい。
数年早く旧ヴェローニカ派の粛清をしたようなものだけど、フェルディナンドもいるしなんとかするだろう。
わたしの教育については貴族院の予習どころではないということになって、側仕え達から少しずつ貴族教育と淑女教育を受けている。
領主候補生なので本来ならフロレンツィアがすべきだが、ジルヴェスター夫妻の教育放棄の実績によりどうあっても任せられないとなり、カルステッド夫妻も養子に出したとは言え領主一族傍系という身分でありながら何も手を打たなかったので任せるにあたわず、リヒャルダとオティーリエは教育係として付けられたにも関わらず神殿で過ごすわたしが悪いと堂々と責任転嫁したので、ボニファティウス砲がまた火を吹いたらしい。
側仕えのおば様達は身分が足りなくて申し訳ないと恐縮しながら、それでも色々と教えてくれる。
そしてお茶会の練習として寄付金集めとフェシュピールコンサート位しかしたことがないと言ったら、やっぱり怒った。
普通は粗相しても笑って済ませられる、親しい家の子供と保護者付きで練習するらしいからね。わたしの場合はシャルロッテとのお茶会しか無いわけだが、それもヴィルフリートが白の塔に侵入した挙句の狼藉で台無しになったとぶっちゃけたら、更に怒った。
子供部屋で側近候補と顔合わせらしいが側近候補とは誰だろう、二年も経ってるから顔と名前が一致しないかもしれないとしょんぼりして見せたら、おば様達から表情が消えた。怒りが天元突破したらしい。ごゆるりとお過ごしくださいと本を渡されて、ボニファティウスに訴えに行った。
そして、ひとしきりボニファティウス砲を無差別に撒き散らかして来たおじい様とお茶タイムである。

「あやつらは全く話にならぬ。側近候補の名簿も見せられたが、上級貴族がほとんどおらぬ上に側近に付けるのは貴族院入学後だと抜かしおった。ヴィルフリートもシャルロッテも既に見習いを側近を付けているというのに、儂の孫娘をどこまで蔑ろにするつもりだ」

お怒りですね、おじい様。全くその通りですが。それにしてもまともな側仕えって仕事が速い。
ジルヴェスターとフェルディナンド、カルステッドにとっては使い潰すのが前提の身食いだからね。
まともな領主候補生として遇するつもりなんてさらさら無いだろうし、最低限の体裁が整えばいいだろうと言いつつその最低限にも達してないわけで、孫だと信じ切っているボニファティウスからしたらありえない扱いだろう。
あの三人、しこたま怒られてこれからどうするんだろうねぇ。
貧民の身食いだから今の扱いでも十分すぎるとぶっちゃけるのかな? リンクベルク家の娘として洗礼式してしまってるんだから、どうしようもないと思うけど。

「お茶会の練習に、その候補達をお招きしていいですか?」
「うむ。それが良かろうな。おじい様がしっかりと見張っているから安心して挑みなさい」

ディーノもお茶会を戦場扱いしてたけど、変なところが似てるなぁ。
そんなわけで、お茶会を開くことになった。

上級貴族の側近候補とコルネリウスを招いての保護者付きお茶会当日。
わたしの後ろにはきりっと立つアンゲリカ、胃が痛そうなダームエル。ボニファティウスはお茶会室で待機中。
しれっと付いてきているオティーリエはボニファティウスを見て慌てふためけばいい。エルヴィーラは知っているようで、浮かない顔をしている。
お茶会室に入ると、どっかり座っているボニファティウスに一様にビクッとする子供達が笑える。
トラウゴットはこの時点で既に問題外、ブリュンヒルデもさして変わらず、レオノーレはコルネリウスがいるならとわたしの事はどうでもいい状態。
ハルトムートもこの頃は傲慢で自分勝手で、嫁入り先を探してやってるのに何が悪いとわたしの事なんか何も考えてないし。
どうしようかなぁ。はぁ。神殿に引き籠もってウチの子達に癒やされたい。
取り敢えずコルネリウスは兄だからとわたしに敬称も付けず、其方呼ばわりで上から目線の子守気分だろうから勝手にさせておこう。
反省会でボニファティウスにあれは護衛騎士として正しいのかと聞けば、また噴火して解任してくれるかもしれないし。
カトルカールや衣装、髪飾りを褒められて、それぞれのアピールタイムになった。
トップバッターはブリュンヒルデらしい。家格からすれば妥当、なのかな?

「わたくし、流行発信するのが幼い頃からの夢なのです。ローゼマイン様がやっとお目覚めになって嬉しゅうございます。是非、流行を広めるお手伝いをさせて下さいませ」
「そう。素敵な夢ね。ブリュンヒルデは上級貴族で上級生なのだから、わたくしの目覚めを待たなくても自分の流行を広めれば良かったのではなくて? アウブもエーレンフェストの影響力を高めたいと仰せですから、貴女の流行を広めることに反対なさらなかったでしょう。何故そうしなかったの?」

バッサリ切り捨てますよ。
わたしを利用して望みを叶えると堂々と言ってのけるのはいいけど、おじい様が見てますよ? この上からな感じ、どうにかならないんだろうか。

「ですが、アウブが流行発信はローゼマイン様がお目覚めになってからだと」
「それはわたくしの流行に関してでしょう? 幼い頃からの夢だというのなら、流行のひとつやふたつ、用意してから貴族院に行ったのではないの?」
「え……? それは、あの……」
「言い過ぎだよ、ローゼマイン。せっかく側近に名乗り出てくれたんだから」

出たー。子守気分のオニイサマ。カルステッドとエルヴィーラの教育はどうなってるんだ?
まぁ、二人共いつでもどこでもわたしの事は呼び捨てにしてるし、子供が親に倣うのは当然か。エックハルトもランプレヒトも常に呼び捨てで上からだし。
ヴェローニカが退場してから二年以上、身分が仕事を取り戻すどころか、ライゼガング系が調子に乗って悪化しているのが現状だ。
仕事しろ、アウブ夫妻とボニファティウス。
お次はハルトムートですか。聖女伝説を広げて上位領地に嫁ぐ準備は整っておりますって、この頃のハルトムートは本当に何様のつもりなんだろうね。

「それはどなたからの指示なの?」
「指示など必要ございません。ローゼマイン様はエーレンフェストなどに留め置いてはならないこの世の聖女。筆頭文官としてお望みの縁談をまとめてまいります」
「そう。ハルトムートはわたくしをエーレンフェストから追い出したいのね」
「とんでもございません!」
「そうなの? わたくし、他領に嫁ぎたいなんて頼んでいませんのに。レーベレヒトとオティーリエの息子ですものね。フロレンツィア様のためにわたくしの存在が邪魔だと判断したのでしょう? ヴィルフリート様の側近として打診を受けたのではなくて? 何故受けなかったの?」
「私の主はローゼマイン様だけでございます!」
「わたくしの意思も希望も何ひとつ確認しないのに? 勝手な判断で勝手な行動をするのが筆頭文官なの?」

絶句してるけど、フロレンツィアに仕えるレーベレヒトを見て育てばこうなるんだろうな。
良きにはからえの主と領主候補生を平然と盾にする筆頭文官だもんね。
ハルトムートは再教育でなんとかなるし、勝手な行動の責任を取ってもらわないとだけど、さて、この流れでレオノーレとトラウゴットはどうするのかな。どっちも矯正不可能なのはわかってるんだけど。

「私はローゼマイン様の護衛騎士となり、魔力圧縮法を教えて頂くつもりです」

勇者か、トラウゴット。おじい様がぐるぐる唸り始めちゃったよ。
わたしの後ろにいるから、貴方達からよく見えるでしょ? よく気にせずにいられるね?

「魔力圧縮法を誰に教えるかはアウブがお決めになります。わたくしの側近になったからといって教えられるとは限りませんよ」
「そうですか。ではやはり、ヴィルフリート様の護衛騎士になります」

うん、ぶっちゃけすぎ。
こっちは側近にするつもりなんかないし、勝手にすればいいけどね。おじい様が見てるから、領主一族の側近になるのは不可能だと思うよ。
誰にも仕えずに騎士団長になるのが夢だっけ? 騎士団長になるのは無理だけど、主を持たない未来へご案内だ。夢が半分叶ってよかったね。
おや、ハルトムートが迎撃しますか。そういえばそんな流れだった。リヒャルダがいつものようにトラウゴットを神殿に入れるとか言い出すんだろうか。断固拒否するけど。
皆、自分の都合ばっかりよくここまで垂れ流せるよね。立身出世のために側近になるのは別に構わないけど、主として認めていない言動を繰り広げる側近はいりません。
コルネリウスがハルトムートを宥めてるけど、何でだ? 主な妹を馬鹿にされたんだから一緒に怒るところじゃない? 本当に誰もわたしを主と認めてないよね。
いい加減にして欲しい。神殿に引き籠もりたい。トゥーリとルッツに癒やされたい。
レオノーレはどうするのかな? ほほう。保身を選んで口を噤むのね? 側近辞退という事でいいかな? いいよね?

「お茶会はここまでにいたしましょう。ハルトムートは残りなさい。話があります」

うんざりした溜め息が溢れるのは許していただきたい。
この中で唯一矯正可能なハルトムートにお説教だ。
しかしまだ幼いとは言え、わたしが他領に行けば異性で文官のハルトムートは付いてこれないのは常識なのに、良い事したと自信満々なのが解せぬ。

「おじい様。わたくしは自分が聖女だなんて思っていませんし、勝手に話を広められてとても不愉快です。それ以前に、アウブやフェルディナンド様はわたくしが聖女だと他領に喧伝する予定がおありだったのですか? わたくしは他領に嫁ぐことを望まれているのですか?」
「そんなわけがなかろう。其方を他領に奪われぬために領主候補生としたのだぞ」
「でも、皆自分勝手なことばかり言って、わたくしを利用することしか考えていませんでした。誰にも認められていないのに、わたくしは領主候補生なのでしょうか」

あ、何か泣けてきた。我慢するのも面倒くさい。泣いちゃえ。

「ろ、ローゼマイン? 泣くな、泣くでない。其方は儂の孫、儂の姫だ。間違いなく領主候補生だぞ!」
「申し訳ございません、ローゼマイン様! 何でもいたします! 何でもいたしますからどうかお許しください!!」

しばらく泣いて、鼻がぐずぐずいってるけど別にいいや。ちょっとスッキリした。

「ハルトムートは本当にわたくしの側近になりたいのですか?」
「はい! 私の主はローゼマイン様だけでございます! 全ての神々に誓います!!」

ベロイヒクローネを被せて本当に誓わせてやろうか。

「そう。では、必ずわたくしの指示を仰ぎ、従いなさい。勝手な行動は許しません」
「はい! はい! では……!!」
「貴方を側近にするかどうかは、貴方が自分の行動の責任を取ってから決めます」

何で驚くのかな? 当たり前じゃないか。
ハルトムートが聖女伝説を勝手に広げたせいで色ボケ王子共やら大領地やらに絡まれて、わたしが怒られるのだ。
無罪放免なんかにしません。責任取れこんちくしょう。

「自分勝手な考えで広めた聖女伝説とやらを消しなさい。貴方の行動はわたくしの意思を無視しただけでなく、エーレンフェストに対する背任行為でもあります。おじい様、アウブ達はこの事態をご存じないのではありませんか?」
「知らぬであろうな。儂から報告しておこう。ハルトムート、仮に事態の収拾を付けたとしてもローゼマインの側近に召し上げるとは限らぬ。心得ておけ」
「……かしこまりました」

はぁ、終わった終わった。次は反省会だけど、またボニファティウス砲が火を吹くんだろうなぁ……

ボニファティウスが呪詛砲を撒き散らかしている。上級貴族の側近候補が全滅したんだからさもありなんだ。
さて、身分を弁えないお孫さんを解任しますよ。

「ところでおじい様」
「何だ?」
「コルネリウスは今日のお茶会、側近として参加したのですか? 兄として参加したのですか? わたくし、ずっと呼び捨てにされていたのです。いずれにせよ、上級貴族が領主候補生を呼び捨てにするなど、不遜極まりないですよね? カルステッドもエルヴィーラもエックハルトもランプレヒトもそうなのですが、おじい様、ご子息達にどんな教育をなさったのですか。トラウゴットはおじい様とリヒャルダの孫ですよね。あのように振る舞えとトラウゴットのお父様に教えたのですか」

じっとり恨めしげに見つめてやる。
身分が仕事をしてないのはボニファティウスにも責任がある。アーデルベルトがヴェローニカを抑えられなかったのなら、ボニファティウスが抑えないとダメだったのだ。
若い頃に領主候補生の責務を放棄してたんだから、のんきに引退なんかさせません。現役復帰してキリキリ働け。

「コルネリウスも解任します。ただでさえ見下されているのに、このままではわたくし、上級貴族に舐められている領主候補生だともっと馬鹿にされてしまいます。貴族院であんな態度を取られたら、エーレンフェストはやっぱり最低辺の田舎領地だと笑われてしまいますよ。順位を上げたいのではないのですか? こんな有様で上げられるのですか?」
「ぬぅ……しかしそれでは護衛騎士が……」
「おじい様もわたくしが馬鹿にされればいいと思ってらっしゃるのですね……」
「違う! 違うぞ、ローゼマイン! 其方の守りが薄くなるのが心配なのだ!」

わたしの筆頭護衛騎士はダームエルだし、アンゲリカとユーディットがいればいい。貴族院は季節外に通えば成人側近を付けられるし。ダームエルしかいないけど。

「わたくし、護衛してやってるんだ、子守してやってるんだと見下されながら過ごすなんて嫌です。中級と下級だけでも良いではありませんか」
「それは領主候補生に相応しくないのだ」
「ではどうするのですか? 今日集めた子供達で全てなのに、どこから上級貴族を連れてくるのですか? ヴィルフリート様とシャルロッテ様が譲って下さるのですか?」

ぐぬぬ、とか言ってるけど現実を見て欲しい。上級全滅、中級も下級も相応しくない、派閥違いもダメ。それだと誰も残らないじゃないか。
嬉々として実子達の側近漁りしただろうアウブ夫妻を止めなかったフェルディナンドとボニファティウスは何をしてたんだ。
アーレンスバッハ系の領主一族を認めないと言いながら、ホイホイ側近打診を受けたライゼガング系もね。
あーもうヤダヤダ。学生側近がいないから季節外でってことにならないかなぁ。

「わたくし、学生側近がアンゲリカしかいないのにどうやって貴族院で過ごせばいいのでしょう……自室から出ることすら出来ません……」

おじい様、今気付いたって顔をしないで下さい。
側近が大勢いるのが当たり前だもんね? フェルディナンドでさえ、嫌がらせのおかげで数だけは揃ってたもんね? 側近が居ない領主候補生なんて想像すら出来ないよね?
オハナシアイに出かけるたびにジルヴェスター夫妻とフェルディナンドが冬に通常入学させると譲らないらしいけど、このままでは本当に寮の部屋から出られませんよ?
入学しても全講義欠席、再試験も受けられずに落第確定ですよ? なんのために貴族院へ行くのですか? 恥を掻きに行けという事ですか? エーレンフェストの大恥を晒すことになるけどいいんですか?
ディーノが最後まで誤魔化して教えてくれなかったけど、この無理矢理な貴族院ドナドナ、どう考えてもわたしのためじゃない。はっきりさせたいけど、どうやって調べようかな。
どうせヴィルフリートの為に働いて成果を献上しろって事なんだろうけど、お断りですー。モヤモヤする。なんとかならないかな。

「よし、おじい様に任せよ!」

はいはい、頑張って下さい。
本読んで寝ようっと。

数日に渡るドンパチの結果。
どうあってもヴィルフリートと一緒に貴族院へ行けとジルヴェスター夫妻が譲らず、フェルディナンドがこれ以上瑕疵を付けるべきではないと熱弁し、ボニファティウス敗北。
もっと踏ん張れ、おじい様。ガッカリだよ。
その代わりと言っては何だが、わたしの希望を通すということでリヒャルダとオティーリエ、コルネリウスを解任。側近のままだったとは驚きである。
そして彼らを任命した保護者達に任せてまたロクデナシを集められても困ると、側近選びはわたしの好きにしていい事になったそうだ。
上級と家格が高い中級は確保済みだって事ですね。知ってます。
ついでにフェルディナンドが後見人から降ろされた。
ボニファティウスが今すぐ神殿からでろと迫ったら、根回しが出来てないとか魔力不足がとかで断ったので、わたしに瑕疵を付けるなと言うなら神官が後見人なのも大きな瑕疵だからとボニファティウスが後見人を奪い取ってきた。これはいいかもしれない。
神殿育ちの神殿長の後見人が青色の神官長って、馬鹿にされて舐められるのは当たり前だった。早く気付け、わたし。
わたしの神殿長も辞めさせろと騒いだそうだが、そうしたら足りない魔力をどこから持ってくるんだという話になって言いくるめられ、またもやボニファティウス敗北。
異常なまでに口達者なフェルディナンドにおじい様が全勝するのは無理だった。
そんなわけで今、ボニファティウスがぶすくれている。でもわたしの気分はちょっと良くなった。
シュボルト先生とフィリーネ編集長を堂々とお招きできます。
リーゼレータとユーディットは最初から丸印が付いてたし、グレーティアだって文句は言わせない。
マティアスとラウレンツはまだ関わりがないし、子供部屋と寮内をヴィルフリートに任せたら側近になりたいとは言わないだろう。それで構わない。名捧げ石、いらない。

「三日後、ユストクスが来るそうだ」
「ユストクスが? 何をしに?」
「フェルディナンドとリヒャルダの名代として、其方の機嫌伺いだ」

ふむふむ。リンクベルク宗家に立入禁止を食らった主と母親の代わりにお詫びをってことですね。
フェルディナンドとリヒャルダとトラウゴット。ユストクスの周辺は大惨事だ。ご愁傷さまです。
今のハルトムートは使い物にならないし、ユストクスが来るなら丁度いいや。トラウゴットの事も追加でつついて、ジルヴェスター夫妻の真意をはっきりさせよう。
この頃はまだ一応、城付きの文官だったはずだから、ついでに事業担当の文官はどうなってるんだとユストクス越しにジルヴェスターとフェルディナンドをいじめておこう。
いい年した大人が揃いも揃って無責任すぎるのだ。二年間、何をしてたんだと問い詰めたい。ユストクスを問い詰めるんだけどさ。
これでもアウブ同士の化かし合いや嫌味合戦を熟してきたからね。ボニファティウスが後見人になったし、どんどん吐かせてやる。そしてまた怒られるがいい。

そしてやって来ました、ユストクスの機嫌伺い。
さすがにニヨニヨしてないね。そんな顔を見せたらボニファティウスの鉄拳制裁が待ってるから当たり前か。

「この度は我が主と母、更には甥までが無礼を働き、失礼いたしました」
「そうですね。ゲボルトヌーンのお導きのもと、アンハルトゥングの祝福は得られたのかしら?」

おぉ、引きつってる引きつってる。ユストクスもわたしが平民だって知ってるもんね。
取り敢えず下手に出ておけば恐縮して許すと思ってたのかな?
ボニファティウスの前でそんな事したら、わたしまでとばっちりを食うではないか。ここではボニファティウス最愛の姫孫です。そのように振る舞いますよ。

「どうなさったの?」
「いえ、ご立派になられたと驚いてしまいまして」
「おじい様とおじい様の選んだ側仕え達から教育を受けていますもの。当然ではなくて?」

絶句するユストクス。ふふん。勝った。
フェルディナンドは貴族としてズレてますからね? オカシイですからね? 教育者として問題ありまくりですからね?
さて、先制攻撃して畳み掛けなくては。
どうせ流行発信させろとか事業の契約をさっさと書き換えさせろとか言われてるんでしょ? 神様乱舞なんてやめやめ。言質を取るスタイルで行きますよ。

「わたくし、満足に側近も揃えられない上、全く動かない体で貴族院へ行かなくてはならないそうですが、何故なのか教えて下さるかしら。アウブご夫妻のご意見を知りたいわ」
「姫様に不要な瑕疵を付けぬ為でございます」
「それはフェルディナンド様のご意見でしょう? アウブご夫妻はヴィルフリートの為だと仰ったそうですが、未だ教育不足のわたくしに何を期待なさっているのかしら」
「……姫様以上に流行に詳しい方はいらっしゃいませんので、お任せしたいと」
「そう。では、流行発信して、それが受け入れられた場合の準備は出来ているのね? ああ、領地間取引はアウブの責任なのに、わたくしったら失礼なことを言ってしまったわ。二年もあったのですもの、恙無く滞りなくお済みでしょう。領地を率いるアウブならば当然ですわね」
「いえ、その……」
「まぁ、何か問題が? おじい様、このままアウブのご指示に従って大丈夫でしょうか。流行発信しておきながら取引できないなんて事になったら、エーレンフェストは大変な事になるのではないですか?」
「はっきり申せ、ユストクス」

おじい様にお任せしてお茶飲もう。
キリキリ吐けユストクスー。ガンバレおじい様ー。ハッセに使えない文官を送り込んだ後、なーんにもしてないの知ってるけどねー。
ふんふん、ほうほう。安定のおこちゃまアウブですね。
他領から見向きもされない流行でどうやって影響力を持つのかな? そんなの、貴族院で披露する意味ないよね? 下位根性が染み付いてるんだから、目立たずひっそりやり過ごしたほうがいいんじゃないかな?
順位上げたいって言ってるのはジルヴェスターだけで、ほとんどの貴族はそんな事より領内で権力争いに明け暮れたいらしいけど?
そしてヴィルフリートの実績の為にわたしに流行発信させたいと。わたしの流行をわたしが発信するんだから、わたしの実績ですが?
ついでに寮内をまとめろ? それがヴィルフリートの実績になる?
予想通りとは言え、ジギスヴァルト並みのトンデモ屁理屈だね!
それにしてもおじい様効果は大きいなぁ。ユストクスが吐かざるを得ないんだもんねぇ。もっと燃料投下しようっと。大暴れしてきて下さい、おじい様。

「そうですか……わたくしはアウブにとってのフェルディナンド様のように、ヴィルフリート様の為に飼い殺して使い潰す存在なのですね……」

アンゲリカの切ない振りを披露しちゃうよ。勘違いでも思い込みでもなんでもなく、本当の事だし。
はいはい、平民平民、わたくし、平民でございます。使い潰して当たり前、気に入らなくても都合が悪くなっても処分ですね。知ってます。
おじい様が憤然と立ち上がり、ユストクスの首根っこを掴んで持ち上げて出ていった。
トンデモ屁理屈を捏ねる無責任な大人達なんて、怪獣暴れするボニファティウスにぺちゃんこにされればいい。

陰ながら応援しております、おじい様。
さて、本でも読みながらのんびりしよう。

領地間取引の準備が一切なされていないことが露見し、今年の流行発信はプレーンのカトルカールだけになった。
ジルヴェスターが往生際悪く足掻いたらしいが、取引出来ない流行を発信しても意味がないどころかエーレンフェストの評価が下がると、フェルディナンドが珍しくもジルヴェスターに逆らったとのこと。
悪足掻きの内容を少しだけ教えてもらったが、ジルヴェスターが文官ならいくらでもいるんだからやらせればいいと言い放ち、フロレンツィアもそれに同調。
相も変わらず城の仕事を押し付けられているフェルディナンドが、仕事が出来る文官を今すぐここに並べてみせろと静かに怒ったらしい。
ジルヴェスター夫妻の側近文官、執務室付きの文官が自信満々で呼ばれ、その場で木札処理の試験。
試験官、フェルディナンド。
狭すぎる門を突破できる文官がいるはずもなく、せめてユストクスレベルじゃないと使い物にならないと鼻で笑ってバッサリ。
わたしの治療中、魔王様はお疲れ隈を浮かべてジルヴェスターの酒盛りに付き合わされ、流行発信はこうして事業はああしてと酔っ払ってご機嫌に語るジルヴェスターを見ていたので、当然ながら文官を育てて準備していると思っていたらしい。
アレは期待するだけ馬鹿を見る人種だ。魔王のくせに夢を見過ぎである。あ、まだ未覚醒だっけ?
そこから芋蔓式にアウブ決裁までフェルディナンドに持ち込まれているとバレてボニファティウスが火炎放射器と化し、現在、アウブ夫妻は静かに荒ぶるゴルツェに見張られながら仕事をしているそうだ。
そしてわたしは、始まりの宴で神殿長として洗礼式を執り行い、子供部屋に通いつつ何故かギーベ達とお茶会まみれである。
本当にいい加減にして欲しい。ヴィルフリートもシャルロッテもこんな事はしていない。働け、領主候補生共。
子供部屋初日に側近の発表と情報料の支払いを行ったが、旧ヴェローニカ派は敵だから評価なんかするな、側近に加えるなんて何を考えていると安定のヴィルフリート節。
うん、自分の後ろに控えている側近の顔を見てから言おうか。子供部屋が一気に白けたのは言うまでもない。

「命の神エーヴィリーベの厳しき選別を受けた類稀なる出会いに、祝福を祈ることをお許しください」
「許します」

本日のお茶会はハルデンツェルのギーベ夫妻。当然ながらボニファティウスの見張り付き。そういえばこの時点では初対面だったね。

「ローゼマイン様のご無事なお姿を拝見し、安堵いたしました」
「ほとんど体を動かせませんから、無事というわけでもないのですけれどね」
「それは……なんと申し上げるべきか……」

アンゲリカのコテリ。貴族は弱みを見せるなと言うが、体が動かないなんて隠していいレベルを超えてると思う。
どうやっても無理は出来ません、危ないことは一切出来ません、近寄ることも出来ませんと周知徹底しておかないと、有事の際に困るではないか。
フェルディナンドが弱みを見せるな、出来ないと言ってはダメだと繰り返すから、そういうものかと従っていたら酷い目に遭ったもんねぇ。
ライゼガング系は上位の振る舞いなんて出来ないし、したくないから順位を下げろとジルヴェスターに圧力を掛けていたし、キング・オブ・貴族の王族だってやりたくないだの出来ないだの、堂々と言っていた。
フェルディナンドの常識は貴族の常識にあらず。勉強した、わたし。
わたしはマゾじゃないし、ジルヴェスターに尽くし隊のフェルディナンドでもないのだ。
一応、ボニファティウスと側仕えのおば様達に確認したよ?
そうしたら、かしこまりましたと粛々と受けて下位者にぶん投げるのが正解らしい。秘密主義で完璧主義で孤立してて、仕事を丸抱えするしかないフェルディナンド達が間違っているとプンスコしていた。
それはさておき。
ギーベ夫妻がもごもごと誤魔化し、お茶とお菓子を嗜んで、本題である。
毎日毎日同じ話でうんざりだが、今日はちょっと違うはずだ。よし、ギーベ・ハルデンツェルもいじめておこう。

「エルヴィーラの勧めもあり、印刷業を導入することにいたしました。魔力に満ちた小聖杯も届くようになり、感謝しております。これでまた、ハルデンツェルはフォルスエルンテのご加護を頂けるでしょう」
「小聖杯についてはわたくし達神殿の勤めですが、印刷業の事は初めてお聞きしました。領地の事業ですから、エルヴィーラやギーベの一存で決められる事ではないのですが……随分と最高神のご加護が篤いのですね」

困窮をジルヴェスターに訴えようにも握り潰され、カルステッドに頼んでもまともに相手にされなかったのは知ってる。
でも、出来ることを全てやったわけじゃないよね?
そして事業を導入出来て当然というこの態度。
わたしの洗礼式に来てたでしょ。領主主導で領地の事業、産業にするとジルヴェスターが宣言していたではないか。
アウブの頭越しに事業を導入出来るんなら、小聖杯についてはベーゼヴァンスを締め上げて吊るし上げれば良かったんじゃないかな。
何をやってもやらなくてもヴェローニカの迫害は変わらないんだから、やれる事を探して全部やればいいのだ。貴族の常識と無駄なプライドに囚われて、領民を見殺しにした責任はギーベ達にもある。

「お困りだったそうですが、小聖杯に魔力を注ぎ足すなり、奉納式に参加するなりなさいませんでしたの? ハルデンツェルの小聖杯を満たすだけなら、ギーベご一家と側近の方々で一日あれば十分だと思いますけれど?」

愕然とするギーベ夫妻。
小聖杯を魔力で満たせばいいって知ってるのに、何で自分達でしないんだろうね? 出来ることをやってから文句言えば?
ヴェローニカとベーゼヴァンスの嫌がらせだったのは分かりきってるんだし、貴族の権威を振りかざして神殿に乗り込んで、自分とこの小聖杯だけ満たして確保すればいいんだよ。
たかが神殿、たかが青色なんでしょ?
はぁ。自分達は貴族だから神事など論外、だからお前が代わりにやれと言ってる事に気付かないんだろうか。
わたし、領主候補生のずなんだけどなー。

「神事などトロンベ跡の癒やししか知らなんだが、奉納式はかなり重要らしいな。この冬からはローゼマインの護衛を兼ねて儂も参加するゆえ、其方等も奉納するがよかろう。神殿の穢れから孫娘を守れるのは儂しかおらぬのだ。これも後見人の務めであろうよ」

びっくりなことに、ボニファティウスも神殿に来るようになったのだ。コレを飲みながら神事をしてるのですと激マズを味見してもらったからなんだけど。
あと、後見人になったのがよっぽど嬉しいらしく、ご機嫌でギーベ達に一緒に奉納しようと誘いまくって彼らの喜びに水を差している。主犯はワタクシですが。下町の冬の洗礼式も、儂が其方を守らずしてどうする! と張り切ってついて来たし。
ボニファティウスが奉納式に参加しないかと誘ったら、それは拒否できない命令だ。今年から楽が出来ます。ありがとう、怪獣おじい様。

「再びドレッファングーアの糸が交わる時をお待ちいたします」
「えぇ。奉納式でお会いするのを楽しみにしていますね」

既に決まり文句になっているトドメをプレゼント。ギーベ達は奉納式の苦労を思い知るがいい。
明日のギーベは誰だっけ。あ、はい。キルンベルガですね。
このさりげなく痒いところに手が届くフォローっぷり、ボニファティウスの側仕えは優秀ですね。脳筋のお世話の苦労が窺えます。
リヒャルダは子守としては優秀だったんだろうけど、側仕えとしてはどうなんだろう。
趣味に走る息子とか暴れん坊とかを追いかけ回して捕まえて叱りつけてるうちに、それが習い性になったのかな。あれはダメそれはダメこれもダメと頭ごなしに拒否して否定して、とにかく言うことを聞きなさいって感じだったもんね。
もうどうでもいいか。無事に解任できたし、年齢的にも引退して隠居だろう。貴族院にはボニファティウス邸の側仕えが来てくれるし、関わること無いね。スッキリだ。

……エーレンフェストのアウブなんて嫌ですよ。海もないし。ヴェローニカの後始末はジルヴェスターとその子供達に頼んで下さい。尻拭いの押し付け、いらない。
事業をくれ、アウブになれ、そればっかり。そんなに傀儡が欲しいなら、自分とこから領主一族へ養子を出せばいいのに。
ジルヴェスター達が頼りないから? ボニファティウスがアウブになるべきだったから?
カルステッド達の上級落ちを防いでから言って欲しい。
ボニファティウス系列が領主一族から外されるのを結局は認めたんでしょ? 潔く諦めればいいのに、未練がましいなぁ。
ギーベ・キルンベルガのアウブになれはちょっとだけ毛色が違うけど、アウブになんかなったらやることは結局、ヴェローニカの尻拭いだ。断固拒否である。
ま、ボニファティウスの前でアウブなんて考えてませんと言えば、誰もジルヴェスター達に言わされてるなんて思わないから助かってるけど。体調の回復が先だと過保護孫愛炸裂させてるし。
では奉納式でお会いしましょう。さらば。

ふぅ。やっとイルクナーだ。ギーベとブリギッテ夫婦に癒やしてもらおう。
実直で朴訥で和むなぁ。
うんうん、リンファイ紙だね。ありがとう。あ、フォルクの買い取りも無事に出来たんですね。灰色の管理は神官長の管轄だから問題ないですよ。
結婚おめでとう、フォルク。幸せになってね。
どうです、おじい様。ウチの子達は優秀でしょう? ああやってギーベの補佐をしてると、誰も平民だなんて思いませんよね?
でもギーベ、バレるとうるさく言われて馬鹿にされるから気を付けた方がいいですよ。
あ、旦那さん。今回は人員出せとか言わないんで安心して下さい。
ん? 神殿に来るのは嫌ですか? フリュートレーネの杖を出せるようになると、もっとたくさん紙を作れるようになりますよ?
お義兄さんと奥さんがにこやかに奉納式に参加しますって言ってるんだし、そこは顔に出しちゃダメでしょう。入婿なんだから。
はい、奉納式でまたお会いしましょう。楽しみにしてます。
そして喜んじゃってごめん、ダームエル。フィリーネがいるから……って、もっとごめん。ダメかもしれない。
側近の発表を繰り上げたから、入婿と後妻の夫婦がどうするかわかんないや。取り敢えずリーベスクヒルフェに祈っておきます。南無南無。

後のギーベ達は適当に流そう。同じことしか言わないから飽きるんだけど。

あぁ……とうとう貴族院へ行く日になってしまった。
行きたくないよぅ。聖女伝説の火消しが済んでないよぅ。おおぅおおぅ。号泣したい。
ヴィルフリートのひとつ前に転移だけど「ヴィルフリートをよろしく」と全く変わらないフロレンツィア。あ、ボニファティウスが膨らんだ。取り敢えずアンゲリカっておこう。
活躍できるシーンは全て献上しますのでご安心下さいませ。わたくし、気が利く女になったのです。うふふん。
移動が完了するとヴィルフリートによるヴィルフリートの為だけの演説である。

「私達の入学からメルヒオールの卒業まで、領主候補生が約十年続けて在籍する。影響力が高まるこの機会に、好成績を修めて順位を上げよとアウブよりお達しがあった。寮生一丸となって励むように! 私からは以上だ」

ノービジョン夫妻の長男らしい立派な演説ですね。あ、ワタクシも演説ですか? 面倒くさい。

「わたくしの体調が良い時だけになりますが、一緒にお勉強いたしましょう」

笑ってごまかしておこう。ヴィルフリートのやることに口も手も出しません。
成績向上委員会、イラネ。分かりきってる未来は回避一択だ。最優秀も取らないように気を付けて、あと何かあったっけ。
んー、メスティオノーラが何か言ってたような? エアヴェルミーンを助けろだっけ?
シュバルツとヴァイスを動かさないと、アレ、誰も取りに行けないんだよね。図書館の利用登録は希望者だけにして、ソランジュ先生と久し振りにお茶会したいな。
祝福は目立ちすぎるし、どうやって動かそう。魔石を貸せばいいかな。それで動かなかったら放置しよう、そうしよう。
いつでもどこでも威張ってる王族と上位領地の方々にお任せします。

親睦会ではやっぱりアナスタージウスに鼻で笑われて嫌味を言われた。
見ての通りちみっこなので、必殺、わからないふり。そんな噂がと大袈裟に驚いておいた。側近になる前のハルトムートの暴走の尻拭いをさせられるこの理不尽。ふんぬぅ。
アーレンスバッハではヴィルフリートしか相手にしない安定のディートリンデ。
甘ったるく優しくされてお茶会に誘われて舞い上がったヴィルフリートが、寮に戻るなりおばあ様そっくりで美しくて優しい方だと大声で騒いだので、全方位から白い目で見られていた。空気を読めない男は強いね。
リンシャンは使ってないし、トゥーリの髪飾りも泣く泣く諦めたし、アナスタージウスに絡まれた以外は目立ってないはず。
一安心、かな?

講義は一日出席して一日休むというサイクルで過ごしていたら、ヴィルフリートがキレた。アウブと次期アウブに逆らうのかとお冠である。
学生の成績が振るわないらしいね?
ところで、いつ次期アウブの再指名を受けたのかな? ワタクシ、聞いておりませんが? ゴルツェの見張りがなくなって、側近達がはっちゃけて調子に乗ってるのかな?

「ヴィルフリート様もご存知の通り、わたくし、本来なら貴族院へ通える状態ではありません。アウブにもおじい様にも、決して無理はせぬようにと言い含められております」
「しかし、其方が休むせいでエーレンフェストの成績が振るわぬのだ! なんとかせよ!」
「姫様、ボニファティウス様にご報告を」

ボニファティウスの信任厚い側仕えがそっと囁く。途端に直立不動になるヴィルフリートの側近達。
そう。今回のわたしはボニファティウスに報告書を上げているのだ。領地対抗戦に後見人として参加すると張り切っていたから、連携のなってない騎士見習いと一緒に怒られればいい。
まったくもう。ヴィルフリートが実績を積めるように活躍の場を献上したというのに、わたしが何とかしてしまったら意味がないではないか。
というか、なんとかせよと怒鳴ればなんとかなると思ってるのが信じられないよ。
名捧げ石を握ってやりたい放題のヴェローニカに育てられ、ジルヴェスターはフェルディナンドになんとかしてくれと頼り切り、フロレンツィアは黙って微笑んでいればレーベレヒトが良きに計らってくれる。
ダメだ、お手本になる大人がいなかった。
それにしても側仕えのおば様の安心感が凄い。おかげでボニファティウスの屋敷をメイン拠点にしてから、回復薬をほとんど飲んでいない。
感激していたら、子供が常飲するものじゃないと憤慨していた。デスヨネー。
一日休みと言っても、のんびり寛いでいるわけではない。アンゲリカ対策が大変なのです。
成績向上委員会立ち上げてないしコルネリウスもレオノーレもいないので、ベッド脇に机を並べてユーディットも一緒にお勉強。
前は第四段階を餌に勉強してもらったけど、今回は落第したらボニファティウスの訓練が受けられなくなると囁いてみた。同じくらい効果があった。
卒業式のエスコート、ボニファティウスにお願いしたつもりだったのにエックハルトになって、どうでもいいとやる気なかったもんね。
順調に合格して卒業が確定したら、親族枠でボニファティウスにエスコートを頼むのもいいかもしれない。見るからに婚約者な若者より、アンゲリカとリーゼレータの親御さんも気が楽なんじゃなかろうか。
そんな感じで過ごしつつ神の意志取得の日。ハンネローレが見つけたあたりでわたくしも! と適当に嬉しそうなふりをしながら帰ってきた。

一年生の最大イベント、神の意志の取り込みを終えたので、本日は希望者と一緒に嬉し恥ずかしの図書館登録である。
ちゃんと自重して、登録したいけど金銭的に厳しい中級下級の学生達にローデリヒとフィリーネを通して登録費用を貸し出せることと、紋章付きの課題があることをひっそりと広げてもらったので揉め事は起こってない。
ソランジュ先生にはまだ可愛かった頃のハンネローレを参考にして、もじもじとお茶会をお願いしてみた。
まぁまぁ可愛らしいこと、とほっこりしてくれて図書館の執務室でお茶会と相成った。
そしてお茶会当日。
フェルディナンド伝説もとんでもないものが多かったが、ボニファティウス伝説も大概だった。フェルディナンドもボニファティウスも物理的に暴れ過ぎである。
ソランジュ先生、ボニファティウスと在学がギリギリで被ってたんだって。
フェルディナンドの在学中は、さすがボニファティウス様の甥御様ですねとこっそり遠い目になることもしばしばだったらしい。フェルディナンド伝説の一部はボニファティウス伝説が混じって、よりとんでもないことになったとか。
シュバルツとヴァイスの話でしんみりしたところで、ダメで元々だからと魔石を貸して供給してもらったら動き出した。
ソランジュ先生に供給者登録してもらって、アナスタージウスに連絡してもらって、恐れ多いのでと仮の主は辞退したのだが。
アナスタージウスから上級貴族を出せないから善意の協力者になれとお達しが。ディッターを回避できると思ったのに。ふんぬぅ。
せっかく久しぶりにご機嫌で過ごせたのに、アナスタージウスのせいで台無しである。

動き出したシュバルツとヴァイスに女子学生達が群がるようになり、やはりハンネローレが主になりたいと呟いてそれをレスティラウトが聞いたらしく、奉納舞の時間にディッターをふっかけられた。
今回は領地対抗戦か卒業式の後にボニファティウスにボディガードをお願いして採寸するつもりだったのに、やっぱり台無しだ。
エーレンフェストに決定権などあるはずもなく、お譲りしますのでアナスタージウス王子に奏上して下さいと言ったのに、うんざりした様子のアナスタージウスにディッターしてやれと吐き捨てられた。どうしても実力を示すと言って譲らなかったらしい。うんざりなのはこちらである。
こっちにはディッターなんて無意味でしかないのに、現在の主であるわたしと新たな主となるハンネローレをそれぞれの宝にしたディッターをすべきだとルーフェンが無駄に盛り上がり、強制参加になってしまった。
いい加減にしてくれないかな、ダンケルフェルガー共。エーレンフェストは大損害だ。
善意の協力者を交代することは決定事項なので、無駄な損害を出さないためにさっさと負けようと全員一致で決まった。
それなのに珍しい対人戦の乱戦に興奮してしまった一部の騎士見習いと、ダンケルフェルガーに煽られて頭に血が上った一部の騎士見習い、煽ってるうちに自分も興奮してしまったダンケルフェルガーの騎士見習いのせいで予定より長引き。
一本釣りされても怪我をしないようにレッサーくんの中でシュツェーリアの盾を小さく張っていたというのに。

「死にたくなくばどけぇぇぇぇぇぇッ!!」

ちょ!? いきなり動けるわけないでしょ!?
一本釣りしろやバカタレぇぇぇぇぇ!!
興奮しすぎじゃァァァァァァ!!

全力の魔力攻撃の直撃を受けて、わたしはまた死んだ。

『マイン! 早く起きなさい! ドレッファングーア、ヴェントゥヒーテ、お願いします!』

あーもう、うるさいよ、メスティオノーラ。拗らせ処女のヒステリー娘が。

『メスティオノーラ、もう無理よ。すっかり糸が弱ってしまったもの』
『クインタと撚り合わせて補強しないと駄目ね。これでは綺麗な模様にならないわ』
『そんな! そうだわ、マインを欲しがっている糸がたくさんあるじゃない。リーベスクヒルフェとシュテルラートにお願いして、別の糸と結んでもらいましょう? マインだってクインタじゃない方が絶対に幸せよ。そうしましょう? ね?』

断固拒否! 何が何でも拒否!
わたしの夫はディーノだけです!!

『シュテルラートには前に無理を聞いてもらったから、お願いなんか出来ないわ』

そう、そうですよ。そこの我儘娘を止めて下さい!

『こら、ひっぱるな。リーベスクヒルフェ』
『覗いてたら面白そうな話をしてるのよね。シュテルラートも聞いてみなさいよ』

あああぁぁぁぁ。リーベスクヒルフェが来たぁぁぁぁ。
真面目な仕事人、シュテルラート様だけが頼りです! わたしとディーノの糸を絶対に解かないで下さいお願いします!!

『あぁ、シュテルラート、来て下さってよかったわ。マインの糸が弱ってしまってこれ以上の織り直しは無理だって言われたの。クインタとは別の糸と結んで下さらない? その方がマインも幸せになれると思うの』
『私が手ずから結んだ糸を粗末に扱った挙句、別の糸と結べと言うのか? この二本は似合いの夫婦で、幸せに満ちていた。そこのマインも解いてくれるなと必死に訴えているではないか。私は互いを望む糸でなくば決して結ばぬ』
『リーベスクヒルフェ、別の糸と絡めて頂戴!』
『んー。どうしようかしらね。あ、シュテルラートが解けないようにしちゃったわ。んふふ、絶対に解けない糸に絡みたがるのを眺めるのも楽しそう。わたくしも久しぶりにシュテルラートと一緒に結んだ糸だから、このままがいいわ』
『そんな! クインタは駄目です!! エアヴェルミーン様が!』
『メスティオノーラ、エアヴェルミーンは自ら神の座を降りたのだ。いずれ必ず滅ぶ。執着するのはそろそろやめよ。ドレッファングーア、ヴェントゥヒーテ。メスティオノーラをあまり甘やすな。……ふむ。これでよかろう。クインタの糸が消耗してないのが幸いしたな』
『そーれ! マインもクインタも幸せになりなさーい! ついでにわたくしを楽しませてくれると嬉しいわ!』
『あぁ……そんな……』

ありがとうございます、シュテルラート様!
そして愉快犯だと思っててごめんなさい、リーベスクヒルフェ様。

今日はわたしとルッツの洗礼式だ。
トゥーリのお下がりを着て、父さんと母さんとトゥーリが作ってくれた髪飾りを着けて幸せいっぱい。
ベンノさんに後で怒られるかもしれないけど。やりすぎちゃった。てへ。
初めてなのになんだか懐かしいような気がする神殿で、神官様の入場を待つ。

ふわあぁぁぁぁ。すっごい美形の神官様がいる! 春の空みたいな優しい色だぁ。

市民権? 市民登録? だっけ?
あの神官様のところに並んじゃおっと。

「手の平を上にして、手を出して。プツッとするが、それほど痛くはないはずだ」

あんまり痛くなくて良かったけど、やっぱり血は見たくないから目をつぶって、手渡された小さなメダルみたいなものに血を付けた。
その瞬間、白い光に包まれて、目を開けたら――

「ディーノ……」
「……マイン」

ふふっと小さく笑ったら、涙がひと粒、こぼれた。

「嬉し泣きか?」
「もちろん」
「すぐに迎えに行く。おとなしく待っていなさい」

わたし達の糸は解けないように結ばれて、念入りに撚り合わされて、完全に一本になった。
叶わぬ恋に身を焦がす、永遠に大人になれない少女神さん。シュテルラート様に免じて、今回だけはエアヴェルミーンを助けてあげる。

ディーノに手を出したら、即座に老木伐採だけどね!

:あとがき:

テーマは「マジかよメスティオノーラ最低だな」「ロクデナシ三駄女神」でした。

ラスト、シュテルラートさんが二人の糸を念入りに撚り合わせてしまったので、お互いの記憶を全て持ってる。
そしてマインがループさせられていた全ての記憶も復活してしまったので、実は怒り狂っているディーノ。
ついでに「わたしのディーノじゃない」と捨て置かれた事多数で、めちゃくちゃ拗ねてる。
ギュンター宅に速攻乗り込んで、久々のもちふわほっぺを堪能するまでがお約束。
唖然として怯えつつも警戒するギュンター達にもお構いなし。マインの家族は私の家族だと甘えてます。
ディーノはもちふわほっぺを堪能した後、判断ミスや後手に回った、ジルの為にマイン処分決行等々でずごごーんと落ち込みます。
そして幼女の真っ平な胸でヨシヨシされます。

神々に勝手に抱いてるイメージ。
糸を紡ぐドレッファングーアとそれで布を織るヴェントゥヒーテはワンセット。
このワンセットは糸や布の美しさにこだわってるので、エアヴェルミーンに盲目なメスティオノーラと相性がいい感じ。
魔力持ちの糸は色が鮮やかなので、箱庭があった方が綺麗な模様になるわねーと。
リーベスクヒルフェはヤバい愉快犯。エアヴェルミーンにヒトを見る目は絶対に無いと思う。
シュテルラートは真面目さん。信念がある仕事人。頼まれて渋々結んだ久しぶりの糸がラブラブ夫婦になったので密かに安堵。
そしてテーマのメスティオノーラ。よってたかって甘やかされて育ったので、わがまま娘。色んな神具を扱えるので、それぞれの権能を軽視しがち。
闇と命の眷属神は、夫婦なんだから二人で籠もりたいこともあるだろって感じで、メスティオノーラを囲い込んでる女神達を割と冷めた目で見てる。
フェアベルッケンはメスティオノーラが大人になったら遊びましょ♪ と思ってたのに全然大人にならないので興味が失せた。ちょっと特殊(笑)

感想などは pixivFANBOX(やさぐれすぎマイン) へお願いします。微修正してるんで、間違い探しとかやってみます?
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